誤嚥性肺炎に対する予防とリハビリテーション【嚥下筋を適切に鍛える方法は?】

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誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)とは?

人が食べ物や飲み物を口から入れるときに、通常は食道を通って胃へ向かってゆきます。

しかし、その食べ物や飲み物が誤って食道ではなく気道(気管)の方に入ってしまい、肺に向かっていってしまうことがあります。

これを「誤嚥(ごえん)」といいます。

この誤嚥をきっかけに肺炎を起こしてしまうのが「誤嚥性肺炎」です。

日本における高齢者の死亡原因の上位である肺炎の中でも、その大部分が誤嚥性肺炎であるとされています。

高齢化社会が進行する日本において、誤嚥性肺炎の予防と治療は非常に重要な課題となっています。

 

誤嚥性肺炎を発症しやすいのは?

全身状態、特に摂食・嚥下機能や免疫機能が低下している高齢者に発症しやすいです。

免疫機能が低下していると、誤嚥して肺に入ってきた細菌などに対して戦う力が弱く負けてしまうのです。

また、脳血管障害等に起因する摂食・嚥下機能障害を伴うと発症率が増加するとされています。

誤嚥性肺炎は、全身状態が低下した合併症の多い高齢者に生じやすいため重症化しやすい傾向にあります。
ひとたび発症すると嚥下反射や咳嗽反射はさらに低下し、誤嚥性肺炎の再発がしやすくなるという悪循環を形成してしまうので注意が必要です。

悪循環を断ち切るには誤嚥の予防が非常に大切です。

では、誤嚥を予防をするにはどうしたらいいのでしょうか?

 

誤嚥性肺炎を予防するためには?

嚥下動作の過程

嚥下動作の過程   版権: / 123RF 写真素材

誤嚥性肺炎を予防するためには、嚥下機能(飲み込む力)を維持することがポイントです。

嚥下機能を維持するために以下の2点に着目をしてみましょう。
①嚥下反射の起こりやすさ(惹起性)を保つこと
②嚥下筋の筋力や可動性を保つこと

補足
誤嚥性肺炎を予防する上で「呼吸機能や咳反射を正常に保つこと」も大切です。
呼吸状態が不安定な状態の方は嚥下動作をする余裕がなくなり、誤嚥しやすくなってしまうからです。
また、万が一誤嚥した場合に咳き込んで外に吐き出す力も必要です。

 

嚥下筋で特に重要な筋肉は?

嚥下に関わる筋肉は様々ですが、その中でも重要とされている筋肉は舌と舌骨上筋群です。

舌も筋肉である。

舌は筋肉でできています。
手足と同じ横紋筋ですから、使わなければどんどん弱っていってしまうのです。

舌の機能を維持するためにはトレーニングが必要です。

【舌の役割】
舌は食塊の形成や送り込みに重要な役目を果たしている。
また、咽頭期には舌根部が大きく後退して、喉頭壁と接触し、咽頭の圧生成に深く関わっている。

 

舌骨上筋群は嚥下にとても重要。

舌骨上筋群の位置 版権:  / 123RF 写真素材

舌骨上筋群の位置
版権: / 123RF 写真素材

嚥下筋として、代表的な筋肉が舌骨上筋群です。

舌骨上筋群・舌骨下筋群の基本的な解剖。【嚥下動作の関係性について】

2017.02.09
舌骨上筋群
・オトガイ舌骨筋
・顎舌骨筋
・顎二腹筋
・茎突舌骨筋

この筋肉は、舌骨および舌骨から吊られている喉頭の挙上(前上方への移動)に欠かせない筋です。

【喉頭挙上がなぜ大切か?】
舌骨上筋群が喉頭挙上させる筋肉として重要なわけですが、喉頭挙上がなぜ大切なのでしょうか?

喉頭挙上によって以下が促されるからです。
・喉頭蓋閉鎖(気道に物が入らないように蓋をする)
・食道入口部を広げる

逆に、喉頭挙上が不十分になれば気道に物が入り込みやすくなってしまう。
つまり誤嚥する可能性が高まるということに繋がります。

 

舌骨上筋群を鍛える方法は?

嚥下筋の中でも舌骨上筋群がとても重要であると、上記で説明をしました。

舌骨上筋群を鍛える方法で代表的なのが、シャキア法(Shaker exercise)です。

シャキア法とは?

Shaker  Rによって、1997年に報告されたエビデンスの高い舌骨上筋群の強化法である。

【シャキア法の原法】
1)挙上位の保持(等尺性運動):仰臥位で肩を床につけたまま,頭だけをつま先が見えるまで高く上げる.「1 分間挙 上位を保持した後,1 分間休む」これを 3 回繰り返す.

2)反復挙上運動:同じく仰臥位で頭部の上げ下げ(up and down)を 30 回連続して繰り返す.
1)2)を 1 日 3 回,6 週間続ける.

【目的・効果】
・舌骨上筋群など喉頭挙上にかかわる筋の筋力強化を行い,喉頭の前上方運動を改善して食道入口部の開大を図る.
・食道入口部の食塊通過を促進し,咽頭残留(特に下咽頭残留)を少なくする効果がある。

 

シャキア法は実際にはできない方が多い

シャキア法は上記の原法の通りに行うとすると、かなり難しいです。

普通の元気な方が行おうとしても、頭部挙上位を1分間保持するというのは負担の大きい運動です。

ましてや、誤嚥性肺炎を起こしているような全身状態が低下している高齢者はほとんど行えません。

では、どうすればよいでしょうか?

シャキア法の別法として、いくつかの方法が提案されています。
その中の一つとして「嚥下おでこ体操」というのが簡単でオススメです。

 

嚥下おでこ体操とは?

【嚥下おでこ体操の方法】
額に手を当てて抵抗を加え,おへそを のぞきこむように強く下を向くようにする。

① 持続訓練:ゆっくり 5 つ数えながら持続して行う。
② 反復訓練:1 から 5 ま で数を唱えながら,それに合わせて下を向くように力を入れる.

※即時効果もあ るため,食前に実施すると良い。また,あごの下を指で触れて舌骨上筋群の収縮を確認するとよい。

 

誤嚥予防にはまず顎を引くことが大切。

顎引き姿勢を練習しよう

顎引き姿勢を練習しよう

シャキア訓練や嚥下おでこ体操で促したいのは、舌骨上筋群の収縮です。

また、誤嚥性肺炎を繰り返す方は頸部が過剰に伸展(後ろに反っている)して固まってしまっている姿勢になっている場合が多いです。

誤嚥を予防してゆくためには頭頸部の姿勢を修正する必要があります。

首の後ろの筋肉は伸ばして、かつ首の前面にある舌骨上筋群の働きを高めるようにしてゆくことが必要です。

誤嚥しやすい姿勢の原因と対策

誤嚥しやすい姿勢の原因と対策   版権: / 123RF 写真素材

 

注意なければならないのは、単に頭を持ち上げれば舌骨上筋群が働くわけではありません。

顎が上に向いたまま、頭部挙上を一生懸命していても他の筋肉で代償的に行っているだけで、適切な舌骨上筋群の活動は得られていない場合があります。

その点では、まず「嚥下おでこ体操」のように顎を引く動作から練習をするとよいと思います。

顎引き動作に関しては、以下の記事で詳しく説明をしていますので参考にしてください。

首こり解消・姿勢改善に効果的!「あご引き」エクササイズ

2016.05.03

 

誤嚥を予防するための訓練方法のまとめ

訓練
タイプ
訓練法
訓練手技
目的・効果
間接
訓練
嚥下体操

全身や嚥下筋のリラクゼーション
(呼吸や舌運動、構音の反復を含む)

開口訓練 舌骨上筋群を強化し、舌骨の挙上や食道入口開大
舌抵抗運動 舌の筋力増強と体積増大
(食塊の送り込みや口腔・咽頭内圧生成の改善)
舌骨上筋群の筋力増強
前舌保持嚥下  舌根部-咽頭壁の接触強化による咽頭期の嚥下圧増大
頭部挙上訓練 
(シャキア訓練・嚥下おでこ体操など)
喉頭挙上筋(舌骨上筋群)の筋力強化による食道入口部開大の改善。
呼吸トレーニング 呼吸筋の筋力強化(咳嗽力向上)
体幹機能向上訓練 座位姿勢保持、呼吸機能(誤嚥に対する喀出機能)の改善
メンデルソン法 舌骨と喉頭の挙上距離の拡大。咽頭収縮力の増大
直接
訓練
交互嚥下 異なる性状の食塊を交互に嚥下することによる残留物の除去
(口腔や咽頭残留の減少)
複数回嚥下 嚥下の繰り返しによる残留減少
(食事の最後にだけ実施することも可)

 

【参考・引用】

・訓練法のまとめ(2014 版):日本摂食リハビリテーション学会医療検討委員会
http://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/18-1-p55-89.pdf

・倉智雅子:「嚥下機能を維持するリハビリテーションにはどのようなものがありますか?」Geriatric Medicine vol.54 No.1 2016-1

 

関連記事:嚥下機能の評価法について

【誤嚥性肺炎とは?】原因・治療と嚥下機能の評価方法についてまとめました。

2016.06.11

 

 

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