【誤嚥性肺炎とは?】原因・治療と嚥下機能の評価方法についてまとめました。

誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)とは?

誤嚥性肺炎と嚥下障害の関係

誤嚥性肺炎と嚥下障害の関係

誤嚥性肺炎とは、誤嚥によって起こる肺炎です。

「肺炎」は2つに大別されます。

①市中肺炎(病院外で起こるもの)
②院内肺炎(入院中に起こるもの

「誤嚥性肺炎」というのは、肺炎の起こり方に着目した名称です。

つまり、病院外・入院中のどちらでも(市中肺炎・院内肺炎)起こりうる肺炎です。

 

誤嚥性肺炎の原因と治療

「誤嚥」とは、声門を超えて食物や唾液が気道に入り込むことです。
本来は食道に流れてゆく食物や唾液が肺の中に入ってしまう状態です。

※声門を超えない喉頭侵入とは異なります。

誤嚥性肺炎

誤嚥性肺炎 版権: / 123RF 写真素材

「誤嚥」は2つのパターンがあります。

①顕性誤嚥:食事のときに起こる・咳き込んだり、むせる。
②不顕性誤嚥:誤嚥しても咳き込みやむせが起こらない。

誤嚥性肺炎の原因で多いのが、②の不顕性誤嚥によるものであるとされています。

不顕性誤嚥による誤嚥性肺炎の多くは、夜間知らないうちに気道に口の中や、咽頭の分泌物(唾液など)が入り込むことで引き起こされます。

少し唾液を誤嚥しただけで、いきなり肺炎を起こしてしまうわけではありません。

しかし、誤嚥内容物には細菌やウィルスが含まれている可能性があるので、これらが気道内で増え始めるとじわじわと広がり肺炎を発症するのです。

この場合は、細菌を減らさないと良くならないため抗菌薬治療が必要となります。

 

 

誤嚥性肺炎の診断基準は?

誤嚥性肺炎は、嚥下障害の存在のもと肺炎が生じた場合に診断されます。

誤嚥性肺炎には以下の診断基準があります。
①嚥下障害の存在
②胸部レントゲンの浸潤影
③白血球数の上昇(10000/μL以上)

・血液検査では白血球の上昇が重要。
・CRPは重症度の判定に有効だが、肺炎の診断については補助的なデータ。
・喀痰検査は、原因菌の同定に重要。

「嚥下障害を確認した患者に発症する肺炎で、肺炎の原因として嚥下障害以外の明らかなものが考慮されない場合は誤嚥性肺炎として診断してよい。」
とされています。

つまり、肺炎患者に対する嚥下障害の有無を評価することがポイントとなります。

 

嚥下機能の評価の手順と方法

嚥下機能を評価する場合に、まずは嚥下動作自体の前にその患者さんの全体像を評価します。

全体像を把握して、大まかな嚥下障害の有無や程度を推測します。

全体像の評価

①意識レベル
・患者が覚醒していて、評価が可能な状態かどうか。
・認知症や高次脳機能障害の有無。
・コミュニケーションが可能か。

②呼吸状態
・呼吸状態が不安定な場合、誤嚥するリスクが高まる。
・PaCO2の上昇により嚥下反射は抑制される。

③口腔内の状態
・口腔内の浄化作用の低下:口腔内の乾燥、痰の付着、食物残渣などがある。
・嚥下反射惹起能力の低下:痰や唾液の量が多く自己処理が困難な状態
・歯の状態:咀嚼能力を推測

④栄養状態
・著明なるいそうがあれえば、経口摂取が不十分な可能性が高い。
・太いNGチューブは嚥下運動を阻害する。

⑤ADLの機能
・座位保持能力を評価:端座位が保持できるかどうかなど。

⑥頸部のアライメント
・円背で頸部が伸展してしまっていると、誤嚥しやすくなる。
・頸部の前屈ができるかどうか。
・喉頭下垂の有無。

 

臨床的な嚥下機能の評価

嚥下動作の過程 版権:  / 123RF 写真素材

嚥下動作の過程
版権: / 123RF 写真素材

①喉頭挙上検査
【方法】
唾液を嚥下するときの喉頭挙上量、挙上力を甲状軟骨の動きを手指で触知することで把握する。
喉頭挙上量は健常者の場合、2~2.5cm程度で1cm以下を異常とみなす。

②反復唾液嚥下テスト(RSST)
随意的な嚥下反射の惹起性をみる評価。
【方法】
示指で舌骨を、中指で甲状軟骨を触知した状態で対象者に空嚥下を命じ、30秒間に何回嚥下運動が起こるかをみる。

甲状軟骨が中指を乗り越えた場合のみをカウントし、3回未満の場合を陽性とする。
*30秒間の平均嚥下回数の参考値:健常若年者7.4回・健常高齢者5.9回

③水飲みテスト(MWST)
軽症例に実施可能なテスト。
【方法】
30mlの常温水を飲ませて嚥下状態を観察する。

その際の飲み方、むせの有無、水を飲み終わるまでの嚥下回数などにより5段階のプロフィールに分けられる。

【改定水飲みテスト】
重症例にも実施可能なテストとして考案された方法。
冷水3mlを嚥下させ、嚥下の様子を観察する。
*この際にシリンジやティースプーンなどを使用。

④フードテスト
【方法】

茶さじ1杯(4g)のプリンを舌背前部に置き、それを飲み込んでもらう。
その際の嚥下の状態、むせの有無、嚥下前後の呼吸の変化を観察する。

方法は水飲みテストと同様だが、嚥下後に口腔内にプリンが残留しているかどうかを確認する点で異なる。

*重度の嚥下障害が疑われる場合には、誤嚥した場合の肺の侵襲性を考えるとプリンではなくカロリーや甘さの少ないゼリーなどで評価するほうが望ましい。

 

嚥下機能を「目でみる」方法とは?

上記の方法は嚥下機能のスクリーニング評価として行われますが、実際の嚥下中に起きている現象は詳細にはわかりません。

しかし、映像を用いた評価方法であれば嚥下機能を可視化することができます。

嚥下機能を可視化した評価方法が①VE:嚥下内視鏡検査と②VF:嚥下造影です。

 

VEとVF

①VE:嚥下内視鏡検査(鼻咽喉ファイバースコープを使用)
【利点】
・VEは場所を選ばず、実際の食物で評価できることが利点。
・急性期では、検査の機動力からVEが用いられることが多い。
・VFではみえない、唾液の喉頭侵入・誤嚥、痰の喀出を観察できる。

【欠点】
・嚥下反射中の誤嚥の有無は、診断することができない。

②VF:嚥下造影(X線透視装置を使用)
【利点】
・口腔・食道期の評価ができる。

【欠点】
・透視室で行う必要がある。

VFとVEのまとめ

VFとVEのまとめ

VE・VF検査の限界

・VE・VF時の嚥下機能と、栄養摂取の到達度はイコールではない。
検査時に数口問題なく嚥下ができたとしても、食欲が低下していた場合経口による栄養摂取は達成できない。

・VE・VFでは夜間の唾液誤嚥や胃食道逆流は評価できない。
検査時に誤嚥を認めなくても、肺炎の再燃は起こりうるということ。

 

 

「誤嚥性肺炎に対する予防とリハビリテーション」について

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