【COPDに対する呼吸リハビリテーション】効果的な運動方法・負荷量を設定するには?

COPDの治療と運動療法の関係

COPDの治療

呼吸器疾患で代表的なのが、慢性閉塞性肺疾患(COPD)です。

COPDは慢性疾患であり、肺自体を治療することは難しい病態です。

治療薬は主に気管支拡張薬
これは気道を広げて空気の通りをよくして呼吸困難を軽減するという作用があります。
(COPDは気道が狭くなって呼吸がしづらくなってしまうという特徴があるため)

気管支拡張薬を使用すると呼吸が楽になるので、歩行など動いても息が上がりにくくすることができます。

医師の指示に従って、適切にこの気管支拡張薬を継続して使用してゆくことはとっても大切なことです。

COPDの病態

COPDの病態

 

COPDの治療と呼吸リハビリテーション

気管支拡張薬などを使用する薬物療法は大切ですが、それと並行して行うとよいとされているのが呼吸リハビリテーションです。

薬物療法に頼ってばかりいると、どんどん使用する薬の量が増えていってしまいます。

薬はあまり種類が多くなってしまうと、副作用が強くなって現れてしまう可能性もあるため可能であれば使用するのは少ないほうがいいわけです。

呼吸リハビリテーションは非薬物療法の代表例であり、リハビリテーションを適切に継続することができれば使用する薬の量も減らせるようになるかもしれません。

ではCOPDに対する呼吸リハビリテーションとは何をすればよいのでしょうか?

 

運動療法がとても大切・そして効果が高い

呼吸リハビリテーションにおいて有用性が認められているのが運動療法です。

運動療法とは、歩行や筋力とトレーニングのような身体を動かすことです。

COPDに対する運動療法は呼吸リハビリテーション各手技の中でも十分な科学的根拠のある有効な治療法であることが認められています。

米国心血管・呼吸循環リハビリテーション協会のガイドラインでもエビデンスが高いことが示されています。
【COPD患者に対する運動療法の有効性に関するエビデンス】
・運動能力を増大させる:エビデンスA
・自覚的呼吸困難感を軽減する:エビデンスA
・健康関連QOLを向上させる:エビデンスA
・うつ気分や不安を軽減する:エビデンスA
・増悪による入院後の回復を促進:エビデンスA
・生存率を改善する:エビデンスB

 

どんな運動方法が効果的なのか?

運動の種類

運動療法の種類

運動療法の種類

①全身持久力トレーニング
例:歩行・階段昇降・自転車エルゴメータなど

②筋力トレーニング(レジスタンストレーニング)
例:チューブトレーニング・自重・マシントレーニングなど

③柔軟性トレーニング(ストレッチ)
例:胸郭の柔軟性改善・四肢のストレッチ

 

運動トレーニングの原則

①過負荷の原則
組織あるいは器官の機能を向上させるためには、普段よりも強い負荷をかける必要がある。

②特異性の原則
運動トレーニング効果は、行った運動様式および使用された筋肉に依存する。

③可逆性の原則
運動トレーニングを中止した場合、時間とともに効果は消失する。
運動の継続が原則である。

 

下肢の筋力トレーニングは必須である

運動療法は上記のように様々ですが、その中でも呼吸リハビリテーションにおいて特に有効とされているのが下肢の筋力トレーニングです。

下肢の筋力トレーニングをするためには、下肢を使うことです。

運動トレーニングの原則の一つである②特異性の原則を考えると、下肢を使った様々運動をすることで下肢の筋力トレーニングにつながります。

つまり、代表的な運動が歩行です。

歩行はCOPD患者に対する呼吸リハビリテーションの必須要素として推奨されています。

また、部分的な下肢の筋肉のトレーニングも必要です。

 

 

運動の強度・負荷量はどうすればいいのか?

「適度な運動」ってなに?

「適度な運動をしましょう!」というのは口でいうのは簡単ですが、実はこの適度な具合は人によって違いますので運動の強度・負荷量を決定することは簡単なことではありません。

ちょっとここで薬物療法を例に出してみましょう。

薬は飲み過ぎは副作用が強くでてしまい逆効果だし、飲む量が少なければ効果が十分に発揮することができません。
その人にあった量を医師が判断して処方しているわけですから、適切に飲まなければ意味がないのです。

運動療法も同様です。

運動療法が大切なのは間違いありませんが、ただやればいいというわけではありません。

運動もしすぎも良くないし、運動量が少なすぎも効果が得られないのです。

下の図のように有効下限と安全限界の間の範囲で運動を実施することが「適度な運動」なのです。

適度な運動とは?

適度な運動とは?

 

「適度な運動」を設定しよう

運動療法は運動方法や強度・負荷量を設定し、それを継続してもらうことが非常に重要な点です。

患者さん個人に合わせて「適度な運動」を設定することが、理学療法士の仕事の一つです。

FITTに基づいて運動療法を実施してゆくことが推奨されています。

【運動療法におけるFITT】
Frequency:運動頻度
Intensity:   運動強度
Time:        運動時間
Type:            運動種類

 

低負荷と高負荷の運動。どっちがいいのか?

FITTにおけるIntensity(運動強度)

運動強度は軽めのほうがいいのか、きつめのほうがいいのか?悩む部分だと思います。

結論からいうと、現状ではどちらが効果的であるかというのは明確な基準はないようです。

要するにどちらも効果があるということです。

低負荷運動と高負荷運動はそれぞれに、メリット・デメリットがありますのでその点を理解した上で患者さん個人に合わせて指導をしてゆくというのが現実的な考えではないでしょうか。

低負荷運動と高負荷運動

低負荷運動と高負荷運動     引用文献1)

高負荷の運動は効果である一方で、身体的な負荷がかかるし患者さん自身もつらいのでできればやりたくないでしょう。

まずは、低負荷の運動から始めて慣れてきたら高負荷運動を徐々に増やしてゆく。

上記した運動トレーニングの③可逆性の原則があるように、なによりも継続が最重要です。

有効下限をちょっと上回った程度の低負荷の運動でもいいので、モチベーションを維持しながら継続をしてゆくことが理想的です。

 

 

+αより効果的な運動療法を行うために

「ちょっとだけしんどい」という運動負荷量

COPDの方は体を動かすとすぐに呼吸が苦しくなってしまう傾向にあります。

動くと苦しいから、動きたくなくなってしまいます。

しかし、少し矛盾したようにも感じますが運動療法をすることが結果的に動作時の呼吸苦を軽減し運動耐容能(体力)をアップさせることにつながります。

そのため、ちょっとだけ頑張って運動をする必要があるのです。
運動トレーニングの原則で考えると①過負荷の原則ですね。

「ちょっとだけしんどい」という運動負荷量が目安となります。

 

Borg(ボルグ)スケールだと11〜13が目安になる

「ちょっとだけしんどい」という主観的な症状をボルグスケールという評価方法で当てはめてみましょう。

 ボルグスケールの11~13の範囲が「適度に」身体に負担がかかった負荷量の範囲となります。

ボルグスケール

ボルグスケール

また、このボルグスケールの12~13(ややきつい)はAT(無酸素性作業閾値)に相当するとされています。

COPDの運動療法においてATレベルが効果的な運動負荷量の一つの基準であると考えられます。

【補足】
呼吸器疾患における呼吸困難感は10段階評価の修正ボルグスケールが使用されることが多いです。
ボルグスケールは循環器疾患の評価でよく用いられます。
ただ、ATレベルの評価としてはボルグスケールで考えるのが一般的です。

なぜATレベルなのでしょうか?

 

AT(Anaerobic Threshold: 無酸素性作業閾値)とは?

有酸素運動を処方する際、強度の目安として、AT(Anaerobic Threshold: 無酸素性作業閾値)という指標があります。

これは、からだのエネルギー供給機構が有酸素から無酸素に切りかわる強度のことで、この強度以下の運動は、疲労物質である乳酸の蓄積が抑えられ、身体の負担が小さいレベルといえます。

※引用:http://www.my-zaidan.or.jp/wellness/program/exercise_measurement.html

 

 

COPDはATレベルの閾値が低下している

COPDの病態の特徴として、有酸素エネルギー産生能力が低下しているため無酸素エネルギー産生を早い段階でスタートしてしまう傾向にあります。

つまり、ATレベルの閾値が低下しているのです。

無酸素でのエネルギー産生をするとより一層、呼吸困難感は強くなってしまうので苦しくなって動けないという悪循環に陥ってしまうことになります。

ボルグスケールで13以上の運動負荷はATレベル以上となるので、逆効果になりかねないということです。

このような理由でCOPDに対する運動療法はATレベル以下の負荷量に設定するほうがよいのです。

運動耐容能の向上には有酸素エネルギー産生能力を向上させてATレベルを引き上げることが必要です。

参考記事:COPDの呼吸困難感とエネルギー産生能力の関係

呼吸困難感を軽減させる2つの方法【呼吸器疾患に対するリハビリテーション】

2016.06.24

 

まとめ

・COPDに対する治療として呼吸リハビリテーションは有効である。

・呼吸リハビリテーションにおいて特に運動療法が効果的。

・運動療法の中でも下肢の筋力トレーニングはエビデンスが高く、必須項目。

・運動療法を効果的に行うために、個人に合わせた適切な運動負荷量の設定を検討するべき。

・運動負荷量はATレベル以下に相当するボルグスケール11~13を目安にするとよい。

 

参考文献

1)石川朗ら:「COPD患者に対する運動療法の実際」JOURNAL OF CLINICAL REHABLITATION Vol24 No.5 2015.5
2)濱田泰伸ら:「慢性閉塞性肺疾患における呼吸リハビリテーションの重要性と現状」広大保健学ジャーナル Vol10 2011
3)宮下正好:呼吸リハビリテーションにおける運動療法の理論

 

ご質問やコメントはこちらからどうぞ!