骨転移に関する基礎知識まとめ【がんのリハビリテーション】

がんのリハビリテーションと骨転移

骨転移とはがんが骨に転移をした状態です。

骨転移はがんの転移巣のなかでも頻度の高いものです。

骨転移によって、疼痛や病的骨折・脊椎圧迫などの神経症状による運動や感覚麻痺などを生じることがあります。

リハビリテーションにおいて運動療法というのは大きな柱でありますが、骨転移が認められている場合には運動負荷に注意をする必要があります。

例えば、大腿骨や骨盤に骨転移している場合には、立位や歩行による荷重によって骨に負荷がかかって骨折をしてしまう可能性があります。

また、脊椎の場合には圧迫骨折をすることによって脊髄損傷をしてしまうと、下半身がまったく動かなうという状態にもなりかねません。

そのため、骨転移についての知識を持った上で安全で効果的ながん患者さんへのリハビリテーションを実施してゆくことが求められます。

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骨転移の発生メカニズム

骨転移はがん細胞の原発巣からの遊離、血管内への播種、骨への着床、骨での適応・増殖から成立する複合現象である。

がん細胞は、骨での適応・増殖の段階で、骨環境を利用して適応、生存、増殖し、新たな特性を獲得して骨環境をかえてゆくという相互関連を起こす。

 

骨転移の発生頻度・部位

【骨転移の発生頻度】
 がん患者全体の20~30%程度。

【骨転移の原発巣】
乳がん・肺がんが多い。

【骨転移部位】
原発巣を問わず、骨転移は椎骨で多く、腸骨、大腿骨、肋骨などで多いとされている。

*脊椎骨は、循環、細胞、細胞もマトリックスの適当な赤色髄の割合が多いため、骨転移の割合が多いとされている。
腰椎・胸椎・頚椎・仙骨の順に多い。

 

 

骨転移巣の反応

*反応タイプによって、骨関連事象(SRE)の発生などが異なるため、どの反応が優位かを把握しておくことは重要。

・溶骨型:他の型に比べて病的骨折のリスクが高くなる。
 椎骨への転移の場合、溶骨型は椎体の圧潰などによる不安定性の増加を生じやすい。
・造骨型や骨梁間型:不安定性をきたす前に脊椎腔への腫瘍の進展による脊髄の圧迫を生じることがあるため注意が必要となる。

①溶骨型
破骨細胞が増殖し、骨吸収が亢進した状態となる。

②造骨型
骨芽細胞の活性化、増殖をきたし幼若骨組織、類骨組織を形成し、骨化が進む。

③骨梁間型
骨新生や破壊・吸収をみず、海綿質の間質に腫瘍細胞が増殖する。

④混合型
上記反応が種々の割合で同一個体・同一骨に混在

 

 

骨転移と疼痛

骨転移によってさまざまな症状、合併症を生じる。

一番多いの症状は疼痛であり、性状や強さはさまざまであるが骨転移患者の85%がいずれかの時点で痛みを訴える。

がん関連疼痛の多くは骨転移による痛みといわれており、がんと診断された患者の半数以上が骨の痛みを経験するという報告もある。

【疼痛の発生メカニズム】
骨転移による疼痛の発生は、骨における腫瘍細胞の増殖・進展に伴って時系列で進行する。

骨膜だけでなく、骨髄・皮質骨に知覚神経が投射しており痛みを感知するため、がん細胞が骨髄に着床した初期の段階から痛みが発生する可能性がある。

脊椎転移の場合には、末梢性機序に加えて、脊髄神経が感作され痛みを増強している可能性もある。

椎骨の不安定性や、脊髄や神経根の圧迫によっても痛みを生じる。

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骨転移の画像診断

①骨シンチグラフィ

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【画像・説明文の引用:Wikipedia】 大腸癌からの骨転移が左側の肋骨に見える。化学療法後の右側2つの写真では骨転移が抑えられているのがわかる。

・全身のスクリーニングとして用いられることが多い。
・偽陽性や偽陰性のこともある。
・骨転移巣は局所的な集積の増加(Hot spot)として描出される。
→異常集積をみた場合には、明らかな多発骨転移である場合を除いて、必ず他の手法により転移かどうかを確認する必要がある。
・強度の評価としては不十分。

②単純X線・CT

*疼痛局所・骨シンチで陽性部位などを撮影し、骨皮質の状態などを評価できる。

【骨転移のみえ方】
・造骨性の骨転移:病巣は正常の骨に比較して高濃度(白く)なる。
・溶骨性の骨転移:病巣は正常の骨に比較して低濃度(黒く)なる。

【ポイント】
・読影には濃度のみならず、骨の正常な輪郭の消失がないかどうかにも着目をする。部位によっては、特定の構造物が同定可能かどうかも重要な所見となる。

【例】
脊椎では、正面像で片側の椎弓根が消失する、いわゆる「椎弓根徴候(pedicle sign)」が有名である。
*これは椎体の背側に巣食った病巣が椎弓にまで進展しないと、このような所見としては捉えられないため「早期所見」とはいえない。

 

③FDG-PET

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PET

FDGはブドウ糖に酷似した物質。
細胞に取り込まれると代謝されずにしばらく細胞内に居残る性質がある。
FDG-PETはがん細胞に大量に取り込まれたFDGの全身分布を画像化したもの。

一般にがん細胞は代謝を解糖系に依存しているため、ブドウ糖の消費量が多いという性質がある。

【骨転移のみえ方】
・骨シンチと同様、多くの骨転移巣は、局所的な集積の増加として描出される。
・PET-CT装置を用いれば、病変の位置をより正確に捉えることができる。

【その他】
・放射線治療や化学療法後の治療効果判定のためには、腫瘍の生物学的活性を直接反映したFDG-PETが最も理にかなった手法とされる。

 

④MRI

・骨髄の転移した腫瘍細胞の描出に有用。
・骨破壊の程度や進展、脊髄や神経の圧迫、浸潤の診断が可能。
・単純X線写真と比較して、早期に骨転移巣を描出できる。

【骨転移のみえ方】
*正常骨髄と比較して
・T1強調画像:低信号
・T2強調画像:高信号

 

 

骨転移の症状・経過

・症状として、最初は運動時痛、進行すると安静時痛が出ることもある。

・脊椎転移が進行し、脊髄を圧迫すると安静時痛を生じ、神経根を圧迫すると放散痛として上下肢や側胸部などの痛みが出現する。

・脊椎の中でも、胸椎(特に上位胸椎)への転移は、麻痺を生じるリスクが高い(脊柱管が狭いため)

・骨転移は、原則として無治療であれば進行する。

 

 

骨転移に対する治療

【治療目標】
①疼痛のコントロールによる日常生活動作の維持と病的骨折や脊髄損傷などの骨関連事象を防ぐこと。
②患者の状態に合わせたアプローチでニーズに応える方向性を見出すこと。

【治療】
・外科的手術
・放射線治療
・骨転移に対する薬物治療
・原病への治療

*最近では、早期発見、早期治療によって病的骨折や麻痺を生じる前に、侵襲の低い治療を行うことが勧められている。

 

 

骨転移に対する放射線治療

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放射線治療 【画像引用】Wikipedia

【目的】
・主に除痛と麻痺の制御・予防
照射で疼痛の7~8割はコントロールできる

・切迫骨折に対する骨折予防、骨折の制御
(折れていない状態で照射すると骨折を8割程度予防できる)

【利点】
・手術よりも侵襲が少ない
・薬剤などの全身療法よりも局所効果がある。

【注意点】
・照射直後は骨折のリスクが増える場合がある。
・荷重開始はレントゲンで骨硬化を確認してから行う。
溶骨性変化の骨化は照射後3~6ヶ月程度で出現し、最終的には65%~85%で認められると報告されている。

 

骨転移患者に対するリハビリテーションの目的と注意点

骨転移を生じているということは、がんの病態としては進行している場合が多いです。

しかしながら、その患者さんのQOLを可能な限り維持するためにはリハビリテーションが必要であり、できる範囲で介入をしてゆく必要があります。

【参考】骨転移診断からの生存期間
*原発がん種によって、骨転移後の生命予後は異なる。
・肺がん:数ヶ月〜1年
・乳がんや前立腺がん:2~3年

その中で不安になるのが「安全にリハビリテーションが行うことができるのか?」という点です。

 

リハビリによるメリットとリスクを考える

文献などでは、標準的なアプローチを行うことによって、骨転移患者の安全で効果的なリハは可能であるとされています。

Buntingらの論文に示されている骨転移患者へのリハの要点は以下。

*骨転移患者へのリハの基本的な目的は、寝たきりにならないようにしてできる限り長い時間、自分でできることを維持するということである。

*リハ訓練は以下を中心に行う。
・患者の残存機能を用いる代償テクニックを習得すること。
・装具や道具などの使用方法を身につけること。
・今までとは違うやり方で生活動作を行うように患者や家族を指導すること。

*骨転移患者のリハを行うことによって、リハ中に病的骨折を起こしたり、あるいはリハを行って身体機能や活動性が向上して、日常生活で病的骨折を起こしたりするリスクについては否定できない。
しかし、リハを行わないことで寝たきりになることを考えると、寝たきりによる廃用から生じる多くの合併症リスクのほうが、より大きいと考えることができる。

引用:大森まいこら 「骨転移の診療とリハビリテーション」P89

 

リハビリ時のリスク管理

・リハビリテーションをする際には、まずは安静時痛を評価する。

自発痛がある場合には、病変の活性が高く、骨折のリスクが極めて高い。

・自発痛がなく、画像所見によって体動が可能と判断された場合には、骨に対して少しずつ負荷を高くしながら疼痛が発生する程度を調べてゆく。

・骨転移があっても骨折が起こっていなければ強い疼痛はないことが多いが、一般的には骨折を起こす前に疼痛を生じる。
・疼痛が生じない負荷量を把握しておくことで、より安全に体動を促すことができる。

 

 

骨転移部位で避けるべき動作

リハビリテーションを実施する上で、動作によって疼痛の増強や病的骨折を予防するために避けるべき動作を理解しておく必要があります。

また、リハビリにおいて適切な動作を患者さんやそのご家族に指導をすることは自分で行えることを維持することに繋がってきます。

 

避けるべき動き

・脊椎:捻転する動き。過度の前屈・後屈
・下肢:下肢への荷重。病巣部に捻転が生じる動作
・骨盤:下肢への荷重(荷重面の転移)
・上肢:重いものを持つ。上肢への荷重。病巣部に捻転が生じる動作

【ポイント】
大きく急な動きはできるだけ避けて、細かくゆっくりと動くようにすること。

 

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寝返り・起き上がり動作.001

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起き上がり

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