がんの骨転移に対する放射線療法。その効果・注意点とリハビリテーションの関係。

骨転移とリハビリテーション

がんの骨転移があると、リハビリテーションを実施する上で運動負荷調整の面が非常にシビアになります。

リハビリを実施したが故に病的骨折を助長したりしてしまう可能性もあるので、しっかりと療法士が知識をもっていないと危険です。

さらに、脊椎の骨転移の場合には脊髄圧迫によって神経症状がでる場合があります。
脊髄損傷のように下半身が完全に麻痺してしまうケースもあり、患者さんのADL・QOLに多大な影響を与えてしまいます。

骨転移に対する代表的な治療の一つに放射線療法というのがあります。

放射線療法の前後でリハビリに関わることもあると思うので、療法士も放射線療法についても理解しておく必要があります。

骨転移に関する基礎知識まとめ【がんのリハビリテーション】

2016.09.22

 

がんの治療方法

がんの治療は局所療法と全体療法に大別されます。

【局所療法】
*がんそのものに的を絞った治療方法。病巣が限られている場合。
・手術療法:病巣を切除する
・放射線療法:放射線を照射してがんを攻撃する
・光線力学的療法:レーザー治療の一種

【全身療法】
*病巣が複数確認できたり、全身にがん細胞が侵食している場合など。
・化学療法:抗がん剤を使用
・免疫細胞療法:自己の免疫細胞を活性化する

 

放射線療法の特性と方法

放射線治療の特性

放射線治療は臓器の形態や機能を温存することができる治療法。

侵襲が少ないため高齢者や全身状態不良な症例でも適応することができ、どの部位でも治療可能である。

がんの根治治療として重要であるが、患者の負担が少なく、また強力な局所療法があることから緩和治療、特に骨転移の治療にはなくてはならない存在となっている。

 

放射線治療の方法

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引用:Wikipedia

周囲の正常組織へのダメージを最小限に抑えつつ、がんに十分な放射線を照射するため、がんの場所や大きさ、種類に応じて、最適な治療法が選ばれるが、治療法は外照射と小線源治療に分類できる。
外照射ではリニアックを利用して体外から体内の病巣部に向けて放射線照射を行い、小線源治療では病巣の内部あるいは近くに放射性物質を置いて、体内から放射線を照射させる。

*引用:Wikipedia 放射線療法


*通常のスケジュール*

・1日1回 で週に5回の治療
・1回の治療に必要な時間:10~30分程度
・放射線が照射されるのは1~数分間

 

 

骨転移と放射線治療

骨転移に対する放射線治療の効果

・鎮痛効果
・病変の進行を抑える
・破壊された骨を再骨化させる

放射線治療による鎮痛効果

有痛性骨転移には放射線療法の適応がある。
鎮痛薬による疼痛緩和が不十分な場合でも,放射線 治療により,短い治療期間と軽微な有害事象で,
高率に疼痛の改善や消失が期待できる。

*引用:放射線治療計画ガイドライン2012

 

【骨転移による痛みの原因】
・がん細胞の浸潤に伴う知覚神経の物理的刺激
・がん細胞から産生される蛋白分解酵素による損傷で生じる神経因性疼痛
・腫瘍組織が産生するサイトカインによる刺激
・局所のPH低下に伴う酸による刺激
・がん増大に伴う骨折による痛み
・破骨細胞性骨破壊に伴う痛み

 

【放射線治療による効果】
・微小環境の変化による破骨細胞の活動性低下
・疼痛の原因である腫瘍からの化学的物質の分泌を抑制
・腫瘤の縮小効果
*上記などの影響により鎮痛効果が得られるとされている。

【疼痛に関する放射線の鎮痛効果のデータ *Chowら】
・完全寛解率:23%
・有効率:60%
*分割照射と1回照射での差は認められなかった。

 

 

 放射線治療における骨化効果

溶骨性の変化の骨化は照射後3~6ヶ月で出現し、最終的には65~85%で認められていると報告されている。

溶骨性骨転移は,放射線治療により高率に再石灰化することが知られているが ,放射線治療の骨折予防効果についてのエビデンスは十分ではない。

長管骨の溶骨性骨転移で,骨皮質が 3 cm 以 上あるいは 50%以上破壊されている場合には,骨折の危険が高いため,予防的固定術を行ったう えで術後照射を行うことが推奨される。

*引用:放射線治療計画ガイドライン2012

放射線治療直後には骨折が増える場合があるので注意!
*放射線治療後4~13%で骨折が報告されている。
【想定される理由】
放射線治療によって疼痛が軽減される。(骨化にはしばらく時間がかかるため、骨自体は脆弱。)
     ↓
患者の運動量が増加する
     ↓
骨折リスクが高まる。
ポイント
これらのことより、骨転移に対して放射線治療して疼痛が軽減したから治療完了ということでないということがわかります。
放射線治療後に骨化するには時間がややかかるので、要注意。
リハビリテーションで運動負荷の調整や動作指導をする際にはレントゲンなどの画像検査で状態を確認しながら進めてゆくことが必要です。
 
 
 

脊椎転移による脊髄圧迫と放射線治療

椎骨転移による脊髄の圧迫症状は、脊髄横断症状をきたし患者のQOLを急速に悪化させる。

また、発症後治療開始までに時間が経過すると脊髄損傷が不可逆的になるため早期に治療を開始する必要がある

一般に、発症後48時間以内、あるいは72時間以内に行うべきとされている。

【放射線治療の効果】
・腫瘍の縮小により、脊髄の直接的な圧迫が解除される。
・腫瘍の縮小により、静脈への圧迫が解除されることによって脊髄の循環状態が改善される。

【放射線治療の成績(過去の報告によるデータ)】
・完全麻痺の場合:10~20%が歩行可能となる。
・完全麻痺でない場合;70~75%が症状の改善あり。
           20~60%が歩行可能。
・歩行可能な場合:70~100%で機能維持が可能。

骨折により骨片が脊髄を圧迫している場合は、放射線での効果は期待しがたく、手術を選択すべき。

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