看護・リハビリにおけるポジショニングのチェックポイント -褥瘡予防と呼吸/循環の関係から考えよう-

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ポジショニングってそもそも何?

看護やリハビリにおいてポジショニングというのはとても大切ですよね。

ポジショニングと聞くと看護師としてはまず最初にイメージするのが褥瘡予防でしょうか。

一方で、リハビリ職種は姿勢保持や筋緊張のコントロールなどに対するポジショニングをイメージするかもしれませんね。

「ポジショニング」と一言でいっても、実はかなり奥深いものです。

患者さんの疾患・状況や医療者側の知識や経験にて様々なバリエーションがあります。

「仙骨部の褥瘡予防をしたいけど、全身状態を考えるとギャッジアップをしておきたい。」

こんな悩ましいケースも現場ではよくあるかと思います。

ポジショニングにおいて褥瘡予防とその他の視点とのバランスをいかにとるか?という点がポイントとなります。

この点について今回は少し考えてみたいと思います。

 

 

体位交換とポジショニングの違い

まずは体位交換とポジショニングの違いについておさらいをしておきましょう。

この2つは似ているようで異なるので、ポジショニングとは何か?について理解しておくとよいです。

体位交換とは?

ベッド、椅子などの支持体と接触しているために体重がかかって圧迫されている身体の部分を、身体が向いている方向、挙上の角度、身体の格好、姿勢などをかえることによって移動させることをいう。

*参考:褥瘡ガイドブック 2012

 

 

ポジショニングとは?

運動機能障害を有する者に、クッションなどを活用して身体各部の相対的な位置関係を設定し、目的に適した姿勢(体位)を安全で快適に保持することをいう。

*参考:褥瘡ガイドブック 2012

体位交換は「姿勢を変える」ということ自体が目的です。

一方で、ポジショニングは目的に適した姿勢(体位)を安全で快適に保持する」とされていますね。

患者さんによってその目的は様々。

もちろん褥瘡予防が主な目的の場合もありますが、呼吸・循環動態や疼痛管理などが目的の場合があります。

これら患者さん個々の目的に適した姿勢を安全で快適に保持する。

「安全で快適に」です。

どんなに医学的に良いと考えられるポジショニングでも、患者さん自身が安全で快適に感じなければそれは適切なポジショニングとはいえないのです。

 

 

よいポジショニングとは?

ゴールは患者さんのQOL

ポジショニングのポイント.001

ポジショニングの3つのポイント

よいポジショニングのポイントは3つ。

安定性・安全性・安楽性の3つのバランスがとれていることです。

患者さんが過ごす姿勢ですからこのポジショニングの良し悪しはQOLにも大きく影響をします。

最終的にはポジショニングは患者さんのQOLをいかに維持・高めるか?という視点が大切であると思います。

 

 

90度側臥位を例に考えてみよう

例えば仙骨部の褥瘡がある患者さんに、90度側臥位にポジショニングをしたとします。

褥瘡予防においては外力(圧力・ずれ力)を軽減させるようにポジショニングをすることが基本となります。

しかし、90度側臥位は身体とベッドの支持面が狭くなってしまいますので安定性としては低い姿勢です。
不安定な姿勢ですから患者さんとしては不安に感じるかもしれません。

さらに、下側になる上肢が自重で圧迫されて痛みがでる可能性もあります。

このように、患者さんが不安に感じていたり・痛みを伴うような状態では「安全で安楽な姿勢」ではありませんよね。

90度側臥位にするのであれば、安定性を高めるように上下肢の位置を工夫したり、クッションを多くいれて支持面を増やしてあげるようにすると安定性・安全性・安楽性は改善されるかもしれません。

また、90度側臥位を積極的にとるのであればマットレスをエアマットに交換することも検討してもよいかと思います。

 

 

 

ポジショニングの際に確認したい。チェックポイント9つ。

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褥瘡予防に対するポジショニングで代表的な30度側臥位 版権: / 123RF 写真素材

ポジショニングをするときに確認しておきたい9つのポイントを列記します。
参考にしてみてください。

チェックポイント
①除圧(圧の再分配)ができている
②身体部位のアライメントにねじれや傾きがない
③ずれに対する予測と対応ができる
④クッションやマットレスの適切な選択ができる
⑤ギャッジアップがリクライニングポイントに合わせている
⑥バイタルサインが安定している
⑦疼痛がない
⑧過剰な筋緊張がない
⑨患者が納得している

*⑦〜⑨は見落としがちですが、QOLに関わる大切なポイントです。

 

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呼吸不全と褥瘡予防に対するポジショニングの関係

臨床上で悩ましいのが、呼吸・循環動態が不安定な患者さんに対して褥瘡予防の視点も入れながらポジショニングをしてゆくという点です。

特にICUや急性期で遭遇する場面です。

ポジショニングは呼吸・循環動態にも大きく影響するし、ポジショニング自体が治療にもなります。

呼吸状態が悪く換気量を増大させたい場合や、下側肺障害を予防したい場合にはフラットな背臥位姿勢ではなくギャッジアップ座位・側臥位・腹臥位を選択します。

 

ポジショニングの目的と方法

目的 角度や方法
褥瘡予防 20°〜30°側臥位
換気量の改善 ギャッジアップ座位
VAP予防 20°〜30°ギャッジアップ座位
下側肺障害予防 腹臥位・前傾側臥位

 

 

ギャッジアップ座位と褥瘡予防のバランス

ベッド上でも自主トレはできる

ギャッジアップ座位は仙骨部への褥瘡リスクを高める

VAP予防・誤嚥予防・換気量の増加などを目的としてギャッジアップ座位をとることが必要な患者さんは必然的にギャッジアップ座位の時間が長くなります。

このときに気になるのが、仙骨部の褥瘡リスクが高まるということ。

単純に座位時間が長くなれば仙骨部には持続的に圧力がかかります。

何よりも注意すべきは、「ずり落ちた姿勢」です。

このずり落ち姿勢は、仙骨部にずれ力を発生させるために褥瘡発生のリスクを高めてしまいます。

また、ずり落ちた姿勢は横隔膜の働きを阻害し換気量も低下させてしまうので良いことは全くありません。

姿勢が悪く換気量が減ると、結果的に呼吸は楽に行えなくなってしまうので患者さん自身も苦しい思いをすることになります。

【ずり落ち姿勢による悪循環】
ずり落ち姿勢になる
   ↓
呼吸が苦しい・不安
   ↓
体動が多くなる
   ↓
さらにずり落ち姿勢になる

つまり、ギャッジアップ座位をとる頻度が高い患者さんに対しては「ずり落ち姿勢」をいかに抑制するか?という点が最大のポイントとなります。

 

 

ずり落ち姿勢を予防するポジショニングのコツ

ずり落ち姿勢はどんなに工夫をしても、完全に防ぐことはできません。

しかし、工夫をすれば予防をすることはできますので以下のポイントを参考にしてみてください。

ICUなどは高機能ベッドを導入している病院も多いでしょうから、リクライニングだけではなくチルト機能などのベッドの機能を有効に使用できるようになると良いです。

【ずり落ちを予防するコツ】
・ギャッジアップ開始前に股関節の位置とベッドのリクライニングポイントを合わせる。

・ずり落ちないように大腿部にクッションをストッパーとして入れる。

・ギャッジアップは足上げ→背上げの順で行う。

・骨盤の後傾を防ぐ。(場合によってはランバーサポートをいれてもよい)

 

 

 

循環不全と褥瘡予防に対するポジショニングの関係

循環状態が不良だと褥瘡発生リスクが高まる

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褥瘡は血流障害によって起こる 版権: / 123RF 写真素材

心不全など循環状態が不良な患者さんは、それだけで褥瘡発生リスクが高まります。

なぜでしょうか?

そもそも褥瘡発生には血流障害が強く影響しているためです。

【褥瘡とは?】

身体に加わった外力は骨と皮膚表層の間の軟部組織の血流を低下、あるいは停止させる。

この状況が一定時間持続されると組織は不可逆的な阻血性障害に陥り褥瘡となる。

*参考:日本褥瘡学会,2005

全身的に循環状態が悪いと、皮膚などの末梢組織への血流が低下している可能性が高いです。

また、カテコラミン等の薬剤を使用しているとさらに皮膚血流が低下するというデータもあります。

褥瘡予防において、「局所の体圧値は40〜50mmHgを目安にする」というのが一般的ではありますが、このように皮膚血流が低下しているような患者さんの場合では40mmHgの圧でも毛細血管が閉塞してしまう可能性があるため注意が必要です。

 

【補足】なぜ体圧は40mmHg以下にするの?
人間の毛細血管内圧は通常32mmHg。

そのため、これ以上の圧力が加わると毛細血管が閉塞状態になり皮膚組織への血流が阻害される。

褥瘡を予防するにはこの数値以下に保持することが目安となる。

褥瘡予防に対するポジショニングの基本 -褥瘡発生のメカニズムから考えよう-

2017.07.23

 

 

循環不全の患者の感じるストレスとポジショニングの関係

ポジショニングには患者の姿勢の安定以外にも、安全で安楽な状態をつくることも大切なポイントでしたね。

循環不全の患者さんは、循環動態が不安定なためにデバイスが多くついていたり体位が制限されている場合があります。

また、心臓外科後では疼痛もあり精神的なストレスも強い状態です。

精神的なストレスは心臓にとって負担となり、悪循環を形成します。

【ストレスによる循環動態の悪循環】
精神的ストレス
   ↓
交換神経系の機能異常
   ↓
サイトカインの分泌亢進
   ↓
心拍数の増加
   ↓
不整脈の出現・心拍出量の低下
   ↓
循環不全
心臓関係2.002

頻脈による心不全の悪化

この悪循環は結果的に循環不全を引き起こすので褥瘡発生リスクを高めることになります。

最悪なのは褥瘡が発生してしまい、褥瘡による疼痛が出現することです。

褥瘡による疼痛はさらなる精神的なストレスを患者さんに与えてしまうためです。

このような悪循環を予防するために、患者さんにとっては安楽なポジショニングをしてあげるという視点も大切なのではないかと思います。

呼吸・循環動態や褥瘡予防という視点ももちろん大切ですが、いかに精神的なストレスなくベッド上で過ごせるか?という点もトータルで考えれば重要であることがわかるのではないでしょうか?

 

 

まとめ

看護・リハビリにおけるポジショニングについて、褥瘡予防と呼吸・循環との関係性に着目をして解説をしました。

ポジショニングというのは絶対的な答えはないと思います。

解説してきたように、ポジショニングする際には「何を優先するのか?」を考えなければなりません。

ポジショニング自体が治療にもなるし、それを行うことに対するリスク管理も同時に必要となってきます。

繰り返しになりますが、よいポジショニングのポイントは3つ。

安定性・安全性・安楽性の3つのバランスがとれていることです。

患者さんが長時間過ごす姿勢ですからこのポジショニングの良し悪しはQOLにも大きく影響をします。

最終的にはポジショニングは患者さんのQOLをいかに維持・高めるか?という視点が大切であると思います。

 

 

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