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頭長筋(とうちょうきん)・頸長筋(けいちょうきん)とは?
頭長筋・頸長筋は頚椎の前面に存在し、「椎前筋」ともいわれます。
これらの筋は頸部の深筋筋であり動的な前縦人体のような役割を果たし、頸部の垂直方向の安定性の重要な要素を供給します。
頭長筋の起始・停止・作用・神経支配

頭長筋
版権: / 123RF 写真素材
【起始】
第3〜第6頚椎
(横突起の前結節)
【停止】
後頭骨の基底部
【作用】
・両側作用:頭部を屈曲する
・一側作用:同側に頭部を傾斜し、わずかに回旋させる
【神経支配】
・頸神経叢の直接の枝
(第1 〜第3頸神経)
頸長筋の起始・停止・作用・神経支配

頸長筋
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【起始】
・垂直部:第5頸椎〜第3胸椎
(椎体の前面)
・上斜部:第3頸椎〜第5胸椎
(横突起の前結節)
・下斜部:第1〜第3胸椎
(椎体の前面)
【停止】
・垂直部:第2〜第4頚椎
(椎体の前面)
・上斜部:第1頸椎
(横突起の前結節)
・下斜部:第5〜6頸椎
(横突起の前結節)
【作用】
・両側作用:頚椎を屈曲する
・一側作用:同側に頚椎を傾斜し、わずかに回旋させる
【神経支配】
・頸神経叢の直接の枝
(第2〜第6頸神経)
頭長筋・頸長筋の筋力低下と不良姿勢
頭長筋・頸長筋は普段あまり聞きなれない筋肉名かもしれませんが、姿勢において非常に重要な役割を果たしています。
これらの筋肉は弱化している人が多く、不良姿勢の原因となっています。
典型的な不良姿勢の一つが、猫背姿勢で顎が上がった姿勢です。
この姿勢を側方から観察した場合、頭部が前方にシフトし、胸椎が後弯・さらに肩甲骨が外転位になる姿勢です。
Forward head姿勢・上位交差性症候群とも言われます。

上位交差性症候群
上図は不良姿勢の原因となる、筋肉の状態を示しています。
姿勢を保持する筋肉には弱くなりやすい筋肉・硬くなりやすい筋肉があります。
青色の四角で囲まれている頸部深層筋とは頭長筋や頸長筋のことを示しています。
つまり、頭長筋や頸長筋が弱化しやすい特性をもっているということなのです。
頭長筋・頸長筋のトレーニング方法
頭長筋・頸長筋の弱化が不良姿勢の原因であれば、姿勢を修正するためには弱った部分を鍛える必要があります。
*頭長筋・頸長筋は頸部の深層筋(インナーマッスル)なので、あまりダイナミックな動きは必要ありません。
顎(あご)を引く練習をしよう

顎引き姿勢を練習しよう
猫背・顎上がり姿勢を修正するには顎を引く練習をすればいいわけです。
とてもシンプルで地味です。
このときに主にトレーニングしたいのが頭長筋です。
「顎を引く」という動きは、「頭部を屈曲させる」ということです。
では。
「頭部を屈曲させる」動きを作りだす主な筋肉は?
上記した起始・停止をみていただくとわかるように後頭骨の基底部に停止部をもつ頭長筋ですね!
上位頚椎が過度伸展位になった顎上がり姿勢を頭長筋を使って修正を図りましょう。

頭長筋(側面から)
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不良姿勢で固まってしまっている人は普段あまり使っていない筋肉なので、頭長筋が働き方を忘れてしまっているような状態になっています。
このような場合には、眼球の動き(目線の動き)から誘導するとスムーズにいく場合があります。
目線を上から下に動かすことで自然な頭部屈曲を促すことができるのです。
頸長筋をトレーニングしよう
頭長筋は「顎引き動作」でトレーニングになります。
では、頸長筋はどうすればいいでしょうか?
先ほどの顎引き動作ができたら、顎引きの状態を保ったまますこし頭を持ち上げてみましょう。
このとき必要な動きは「頚椎の屈曲」です。
頸長筋を使って滑らかな頚椎のカーブをつくることを意識します。

頚椎の屈曲
・顎引きの状態をキープする。
・頭を持ち上げようとして過剰に顎を引かないこと。
(胸と顎の間に拳1個分がはいるスペースを保つことが目安)
・呼吸を止めない。
動画はこちら
まとめ
頭長筋と頸長筋の基本的な解剖とトレーニングする方法を紹介しました。
【作用と動き】
・頭長筋:頭部の屈曲→顎を引く
・頸長筋:頸椎の屈曲→頸全体を丸めるように頭を持ち上げる
【頭長筋と頸長筋を同時に鍛えるには?】
上記の筋肉の作用を考慮すれば、
背臥位姿勢(仰向けに寝た姿勢)から「顎を軽く引いて、頭を軽く持ち上げる動作」をしてキープする。
という運動をすればいいのです。
【ポイント】
頭長筋と頸長筋を適切に働かせるには、「軽く」行うことが重要です。
頑張りすぎは注意です。
ゆっくりと頭部〜頚椎の滑らかなカーブをつくることをイメージしながら行うと効果的です。
参考にした教科書
・筋骨格系のキネシオロジー
・プロメテウス解剖学アトラス頭部/神経解剖
鍼灸師の鳥居と申します。
仰臥位で顎を引きながら屈曲させキープとあるのですが等尺性収縮になるとおもいます。
できれば等調性収縮としたいのですがいかがでしょうか?
後は上位交差に至る視点も腰臀部から解説期待します。
文章がわかりやすく参考になります
鳥居さま
コメントありがとうございます。
顎を引いてキープする動きは等尺性収縮です。
もちろん等張性収縮でもいいかと思います。
等尺性収縮で行う理由としては、インナーマッスルである頭長筋・頸長筋は筋の持久性がある程度必要な筋肉のためです。
姿勢を保持するためには弱い力で持続的に働く必要があります。
また、顎を上げた状態を保っている間に呼吸を止めないということもポイントとなります。
姿勢保持筋と呼吸筋のバランスを取れることも大切です。
上位交差性症候群のまえにまずは、骨盤〜腰部の安定性が得られることが抗重力姿勢にはベースとなります。
詳細については機会があれば記事に書きたいと思います。
中谷先生回答ありがとうございます。気になるのは頚長筋に交感神経の神経節が隣接しておりますので交感神経の緊張が高くならないかと思ったのです。勿論正常でない頚部の緊張の高い患者さんを相手にするわけですので容易に迷走神経反射が起きる可能性がでてくるのではないかと思った次第です。
鳥居様
そうなのですね。
自律神経の関係性については考慮にいれていませんでした。
私の経験から直接的にそれによって緊張が高くなってしまった感じは特ににありませんが、自分が意識していなかっただけなのかもしれません。
勉強不足ですいません。
ご指摘ありがとうございました。