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そもそも、ピラティスってなに?
ピラティスというエクササイズをご存知でしょうか?
ピラティスはジョゼフ・ピラティスさん(1880年 ドイツ生まれ)という人が考案したコンセプトです。
ピラティスはリハビリテーションを起源としています。
日本では女性がスタイルアップや美容目的に取り入れていることが多いですが、最近ではピラティスを医療分野でも応用することも増えてきています。
今後は予防医学が確実に重要性が高まってくると思われ、予防分野においてピラティスは間違いなく有効な手段の一つとなるでしょう。
ピラティスについてはこちらで詳しく説明をしています。
ピラティスが呼吸法を大切にしているのはなぜ!?
ピラティスは呼吸をとても大事にしています。
ピラティスには基本原則というものがあり、その中心となるのが呼吸だからです。
呼吸自体も一つのエクササイズです。
また、エクササイズ中には常に呼吸を意識します。
呼吸法は適切に行うことで、非常に多くの効果が得られます。
その理由について3つの要素から詳しく解説をしてゆきます。
呼吸の3つの要素
呼吸は非常に奥深く、様々な視点から呼吸を考えてゆくことができます。
大きく以下の3つに分けて考えてみます。
①呼吸と姿勢(体幹筋)の関係
②呼吸と運動持久力(運動耐容能)の関係
③呼吸と心(自立神経)の関係
あえてこれらを領域を分けるとすれば
①と②は身体(Body)
③は心・精神(Mind・Spirit)
というわけ方になります。
しかしながら、これらは相互に関係して影響を与えあっていますので単独で切り離すことはありません。
ピラティスのコンセプトと呼吸の関係
ちなみに、ピラティスというエクササイズは単なる筋肉を鍛えるための運動ではなく
「身体(Body)・心(Mind)・精神(Spirit)」の包括的な視点で健康を考えるというコンセプトがあります。
呼吸はピラティスにおいて核となる部分であり、「身体・心・精神」すべてにおいて関係している呼吸を理解して上手にコントロールできるようになることは非常に重要なのです。
呼吸する上で最重要な筋肉が「横隔膜」です。
呼吸と姿勢(体幹筋)の関係
呼吸が悪ければ姿勢が悪くなる。姿勢が悪ければ呼吸が悪くなる。
まず呼吸と姿勢の関係についてです。
重要なポイントは筋肉の特徴から「呼吸筋は姿勢筋であり、姿勢筋は呼吸筋である」という点です。
横隔膜・腹横筋・骨盤底筋群・多裂筋などは体幹のコアユニットを構成し体幹の安定化のために重要な役割を果たしていますが、一方で呼吸筋としてもこれらは重要なのです。
つまり、これらの筋肉は呼吸にも姿勢保持にも必要なので、呼吸・姿勢のどちらかが悪くなればお互いに影響をして不具合を生じてしまうということになります。
この点を理解して運動器へのアプローチをすると呼吸自体が有用な運動療法となります。
【例①】姿勢が猫背な人は呼吸が浅くなる。
これは猫背で胸郭が拡張しにくい状態になっていることや、横隔膜が機能しにくいアライメントになっているためです。
また、呼吸が浅い人や努力性呼吸の人(息が苦しくて胸式呼吸が優位になっている人)は姿勢が悪くなってしまいます。
【例②】マラソンで呼吸が苦しい状態の人は、よいフォームを維持することが難しい。
呼吸が苦しくて死にそうなときに、よい姿勢を保つことができるでしょうか?
姿勢を優先するか?呼吸を優先するか?
身体は常に天秤をかけながら必要におうじてそのバランスをコントロールをしているのです。
呼吸は生命維持に関わることであるので、危機的な状態になれば姿勢保持よりも優先して呼吸をすることを選んでいるのです。
安静にしていれば、それほど呼吸により換気をする必要がないため落ち着いてよい姿勢をつくるために筋肉を使用することができます。
呼吸と姿勢の関係性を理解するためにやってみよう!
呼吸筋と姿勢筋の役割を理解するために、自分の身体で実践をしてみましょう。
ピラティスの「ハンドレット」という代表的なエクササイズがあります。
これは「頭と足を持ち上げた状態をキープしながら、手を動かす」という運動を一定時間続けるものです。
ただでさえ、この姿勢をキープすることが大変なのですがこのときに呼吸を止めてはいけません。
呼吸を止めずに、かつ体幹はニュートラル(中間位)を保持するように安定させ続けることが求められるエクササイズです。
呼吸を大きく吸ったり、吐いたりしようとすると腹圧が変化するので体幹がぶれてしまうことがありますが、いかに呼吸をしても体幹がぶれないように保持するかという点がポイントとなります。
呼吸を優先すれば体幹がぶれてしまい、体幹の安定(腹圧の維持)を優先すれば呼吸を浅くなってしまうことに陥りがちです。
このエクササイズを通して呼吸と姿勢保持を天秤にかけて状況に応じて絶妙にコントロールをしてゆくこと、呼吸を必要なときに必要なだけ行えるようにすることの重要性を体感できるかと思います。
【動画はこちら】
ピラティス呼吸が胸式呼吸である理由
ピラティスで推奨されているピラティス呼吸は胸式での呼吸です。
息を吸った際にも腹横筋を適度に・持続的に働かせつつ、下部胸郭を広げるようにして呼吸を行うのがピラティス呼吸の特徴です。
その理由としては、上記のハンドレッドのエクササイズように体幹を安定させつつ、呼吸運動を継続をすることを求めているためです。
息を吸ったときにお腹を膨らませる腹式呼吸では、呼吸のたびに腹圧が大きく変化して動的な体幹の安定性が得られにくくなるのです。
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動きが呼吸をつくり、呼吸が動きをつくる。
呼吸筋は姿勢保持筋であるという点から考えるとこれは当然といえば当然のことです。
今まで述べてきたのは、どちらかというと姿勢(体幹)を安定させた状態での呼吸をどうするか?という視点でした。
次は、体幹を曲げたり捻ったりする動作自体が呼吸に与える影響があるという視点です。
【例:呼吸が動きをつくる】
座位で大きく息を吸うと体幹が伸展する(反る)。強く息を吐くと体幹が屈曲する(丸まる)
呼吸をすることで、肺への空気の出入りが起こるので胸郭が膨らんだりしぼんだりします。
胸郭の内圧の変化により、姿勢も影響されます。
【例:動きが呼吸をつくる】
喉開いた状態(声帯を開く)で、座位で上半身(胸郭)をひねる動きを素早く左右交互に行ってみましょう。
呼吸をしようと思わなくても、勝手に空気が出入りするのです。
胸郭のひねる→戻すを繰り返すことによって、胸郭が圧迫される→解放されるを繰り返すことになるため結果として肺への空気の出入りが自然に起こります。
少しわかりにくいかもしれませんが、身体を動かすだけで、呼吸運動(換気)が行われることが体感できるかと思います。
呼吸と運動持久力(運動耐容能)との関係
生命維持のための呼吸
そもそも呼吸はなんのために行うのでしょうか?
呼吸は生命活動に必要な酸素を供給するためです。
身体活動に必要なエネルギーをつくり出すには酸素が必要なのです。
呼吸運動によって肺に酸素を供給することで、肺胞から血液に酸素を取り込ませて酸素を必要とする全身の細胞に送り届けるのです。
体力の低下と呼吸機能の低下
ちょっと動いただけで息が上がってしまうのを「体力がない」と表現することがありますが、これは呼吸機能が低下していることに影響を受けています。
呼吸機能には大きくわけて2つあります。
①外呼吸(換気)
→通常の呼吸運動で換気能力を指す。
*姿勢が悪くて呼吸が浅い人はこの換気能力が低下している。
②内呼吸(酸素化)
→肺胞から血液への酸素の取り込みをすること。
*病気なので胞が壊れていたりすると顕著に低下する。このとき一生懸命に外呼吸(換気)しても苦しい状態となる(生命の危機)
体力の低下と運動耐容能の低下
呼吸機能が正常でも体力が低下していて、動くとすぐに苦しくなってしまう人(持久力が低い人)もいます。
「体力の低下」=「運動耐容能(最大酸素摂取量)の低下」としてとらえることができます。
運動耐容能とは心臓・肺・筋肉の総合力となってきますので、呼吸機能だけがよくてもその他に問題があれば運動耐容能は向上がしにくいのです。
その場合には運動をして筋肉をトレーニングしてゆくことが有効です。
筋肉をトレーニングしてゆくことによって、筋肉が酸素を上手に消費できるようになります。つまり、燃費がよくなります。
この点においては、筋肉のなかでも赤色線維(遅筋線維)といわれる種類の筋肉が重要です。
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呼吸と心(自律神経)の関係
姿勢と心の関係
姿勢と心も密接に関係をしています。
ストレスがかかって落ち込んだときに、どうしても気分が沈んで猫背姿勢になりがちです。
一方、楽しくて明るい気分のときは身体は伸びやかになり姿勢も胸を開いた状態になるでしょう。
心の状態によって姿勢が影響されます。
逆にいえば姿勢を変えるだけで心まで変えることができるとも言えます。
呼吸と心と姿勢の関係
ストレスがかかると自律神経が乱れ、交感神経が優位となり、胸式呼吸で浅く速い呼吸になってしまう傾向にあります。
そうすると、横隔膜は十分に働かずに肩や頸部の呼吸補助筋が過度に活動してしまいますので、結果的に顎が前に出た不良姿勢になってしまいます。
これは「呼吸」と「心」と「姿勢」が密接に関係してる典型例です。
デスクワーカーが仕事のストレスを抱えて、ノートパソコンを猫背姿勢で一日中タイピングしているというのはかなり最悪な組み合わせなのがわかるかと思います。
自律神経の乱れは呼吸で整える
心の状態・姿勢の状態によっても自律神経が乱れて呼吸も乱れてしまうことがありますが、呼吸を意識的にコントロールすることで自律神経を整えることができます。
普段は無意識にしている呼吸ですが、腹式呼吸を意識的に行ってみましょう。
腹式呼吸は横隔膜をしっかりと使った呼吸です。
ポイントは吐くときにゆっくりと長く吐くことです。
これによって、副交感神経を優位に働かせることができます。
*詳細は下記記事を参照ください。
まとめ(やっぱり横隔膜が大事!)
呼吸を下記の3つに大別して考えてみました。
①呼吸と姿勢(体幹筋)の関係
②呼吸と運動持久力(運動耐容能)の関係
③呼吸と心(自律神経)の関係
「身体(Body)・心(Mind)・精神(Spirit)」は密接に関係しており、この基盤には呼吸があります。
呼吸を整えることで悪循環からよい循環にシフトさせることができる可能性をもっています。
この点からピラティスの原理原則に呼吸があることは理解できるかと思います。
しかし、ピラティス呼吸のような胸式呼吸をいきなり練習することはしなくてよいかと思います。
なんといってもまずは横隔膜が適切に機能することが最重要だと思うからです。
横隔膜がうまく機能すると、
・自立神経も整えることができる
・体幹が安定する
・呼吸の換気量・換気効率が改善する
逆に横隔膜が機能不全を起こせば、悪循環にはまってゆくということです。
まずはゆっくりと深い横隔膜を使った呼吸を練習してみてはいかがでしょうか。
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