肩峰下インピンジメントの原因は?肩関節拘縮と肩甲骨の安定性を中心にまとめてみた。

肩関節の「つまり感」と肩峰下インピンジメント

肩を挙げてゆく時に肩関節がつまるような感じがして、
・可動域に制限がある
・挙げ方が滑らかでなくぎこちない
・途中から痛みがでてそれ以上は困難

こんな状態の肩関節疾患の方も少なくありません。

さらに、うまく肩関節がうまく動かないことに対して、肩甲骨を無理やり挙上させて代償したり体幹を側屈させるような代償動作もあります。

そうすると二次的に他の部位に疼痛が出現して悪循環に陥る場合もあります。

この肩関節の「つまり感」の原因の一つに肩峰下インピンジメントがあります。

 

肩峰下インピンジメントとは?

インピンジメントとは「衝突」という意味があります。

肩峰下インピンジメント症候群の定義は、諸家によって異なっているが、上肢の挙上に際し肩峰と烏口肩峰靭帯からなるcoraco-acromial arch(C-A arch)や肩鎖関節下面などの天蓋と、腱板や肩峰下滑液包との衝突(インピンジメント)により疼痛生じる病態の総称と考えられる。
*引用:林典雄ら 「関節機能解剖学に基づく 整形外科運動療法ナビゲーション 上肢・体幹」

ちょっと上記の表現では難しいですよね。

もう少し表現をかえてみましょう。

肩峰下インピンジメントの「肩峰下」という空間について、Neerは棘上筋出口(supraspinatus outlet)と命名しています。

肩峰下インピンジメント

「肩峰下」の位置=棘上筋出口

なにかしらの原因があると肩甲上腕関節が円滑な動きが行えなくなり、上腕骨頭が過剰に上方向に過剰に滑り運動を起こしてしまう場合があります。

結果として骨頭が肩峰に向かって突き上げるような動きをするので、骨頭と肩峰の間にある軟部組織を挟み込むことで痛みを生じます。

肩峰下インピンジメント

肩峰下インピンジメント

 

大結節と肩峰の位置関係

肩を挙上してゆく際に、いかに大結節が烏口肩峰アーチ(C-A arch)を通過するか?が問題となります。

大結節がうまく通過できない→肩峰下インピンジメントという状態となります。

肩峰下インピンジメント

大結節の衝突

よくみられるのが肩関節外転80°〜120°での肩のつまり感や疼痛です。
この範囲ではインピンジメントが起こりやすいためです。

インピンジメントの評価として有痛弧サイン(painful arc sign)という代表的なテストがありますが、
以下のような大結節と肩峰の位置が関係しています。

大結節は肩関節屈曲や外転運動において、rotational glide(80°〜120°)の時期に肩峰から烏口肩峰靭帯付近に最も近づく。
*引用:林典雄ら 「関節機能解剖学に基づく 整形外科運動療法ナビゲーション 上肢・体幹」

 

 

肩峰下インピンジメントの原因

インピンジメントの原因となるのは多岐にわたります。

原因が様々で実際にはこれらが複合的に絡まり合って症状がでることが多いので、問題を部分的に一つだけ解決しても不十分な場合があります。

すべてをこの記事で説明することは困難ですので、今回は②③に着目をしてみます。

 

重要!
【インピンジメントの代表的な原因】

①腱板機能低下

②肩関節の後方軟部組織の拘縮

③肩甲胸郭関節の機能低下

④肩峰下滑液包(SAB)の癒着

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2016.01.17

 

肩峰下インピンジメントと後方軟部組織の拘縮

肩関節解剖

肩周囲の軟部組織

上記の②について。

肩挙上の際の可動域制限の問題となるのが、肩関節後面の硬さです。

なぜ後面筋が問題となるのか?

本来、肩が屈曲や外転運動をしてゆく際には上腕骨頭が後下方向へ移動してゆくことが必要です。

しかし、その時に肩甲上腕関節後方の軟部組織が拘縮し伸張性が低下した状態になっていると、肩挙上に伴う上腕骨頭の後下方への動きが阻害されてしまいます。

上腕骨頭は後下方向へ移動したいのに後方の硬い軟部組織によって上方向へ押し返さてしまうのです。
結果として骨頭が肩峰とぶつかりやすくなってしまい、肩峰下インピンジメントを引き起こしてしまいます。

肩峰下インピンジメント

肩後面筋の硬さとインピンジメントの関係

評価とアプローチ

肩後面の硬さの原因である三角筋後部線維・棘下筋・小円筋・後方関節包の伸張性を改善することが必要です。

ただし、なんとなく後面の筋をストレッチすればいいというわけではありません。

どの筋が制限因子となっているか?
というのを正確に絞り込む必要があります。

そのためには、肩関節の各肢位での可動域(内旋・外旋)の評価がポイントです。

肩可動域評価

肩関節の可動域評価

*各肢位で肘関節90°屈曲
・1st position:上肢を下垂
・2nd position:肩関節90°外転
・3rd position:肩関節90°外転+90°屈曲

着目するポイント
1st:肩関節上方が伸張され、下方は短縮位となる。
2nd/3rd:肩関節の上方が短縮し、下方が伸張される。

棘下筋・小円筋の作用は上腕骨の外旋で、肩の下方に位置しています。
よって、これらが短縮をすると肩の屈曲・外転・内旋が制限されます。

上記の肢位で表現すると
2nd positionや3rd positionでの内旋制限です。

インピンジメント.002

 

肩関節可動域の制限因子

肩関節可動域

肩関節可動域の制限因子

まとめ

インピンジメントが肩関節後面筋の硬さが原因だと推測
        ↓
     各肢位での評価
        ↓
2nd/3rd positionでの内旋制限があった!
        ↓
棘下筋・小円筋の伸張性低下が原因の可能性
        ↓
      アプローチ
        ↓
       再評価

 

 

肩峰下インピンジメントと肩甲胸郭関節の機能低下

肩甲胸郭関節は肩甲骨と胸郭の関節。
要するに肩甲骨の位置・アライメントの問題です。

 

肩甲上腕リズムとは

「肩甲上腕リズム」と呼ばれるものがあります。
これは上肢の運動の際に、肩甲上腕関節の他に肩甲骨の動きも一定の割合で連動して動く関係性を示しています。肩甲上腕リズム

肩甲骨周囲筋の機能不全にて肩甲骨の可動性やタイミングが悪くなってしまった場合、この肩甲上腕リズムが破綻してしまいます。

肩甲上腕リズムの破綻は、肩峰下インピンジメントの原因となります。

 

肩甲胸郭関節の不安定性と腱板機能

腱板筋群は肩甲骨を起始としています。
そのため、肩甲骨が不安定な状態になっていると腱板筋の機能も十分に発揮できません。

腱板筋が機能低下すれば上腕骨頭の上方偏位を起こす可能性があり、骨頭と肩峰が衝突しやすくなってしまいます。

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まずは肩甲骨の安定化を図ることが大切

上肢の土台となるのは肩甲骨です。
ちなみに下肢の土台は骨盤。

土台が不安定なままではどんなに肩周囲筋のトレーニングやストレッチをしても十分な効果は発揮できません。

肩甲骨は第2のコアと言われるほどその安定化は重要です。
胸郭に肩甲骨が張り付いて必要におうじて滑らかに動く安定性を確保することです。

インピンジメントを起こすような場合、多くの場合は肩甲骨の上方回旋が不足や過剰な挙上がみられています。

つまり、肩甲骨の上方回旋と下制を促通することがポイントとなります。

肩甲骨下制の作用といえば僧帽筋下部線維ですが、前鋸筋の下部線維も下制作用を有しているとされています。

また、前鋸筋は肩甲骨上方回旋作用もあります。

これらを踏まえると?

肩甲胸郭関節の機能低下が肩峰下インピンジメントの原因の場合。
             ↓
肩甲骨安定化を図る上で前鋸筋の促通が重要!

前鋸筋解剖.

前鋸筋の作用

 

 

 

 

肩甲骨の安定化に有効な「ピラティスエクササイズ」

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前鋸筋を働かせるピラティスエクササイズの一例

ピラティスを聞いたことがあるでしょうか?

ピラティスは一般的に「体幹や骨盤周囲のエクササイズ」という一般的なイメージが強いと思います。

しかし、実際には胸郭・肩甲骨・頚部など各部位におけるアライメント・動き方もすべて大切なピラティスの要素です。

肩甲骨はその中でも非常に重要なポジションであり、上記した前鋸筋へのアプローチも行われます。

肩関節疾患のリハビリテーションおいても肩甲骨の安定化を考慮することは必須であり、ピラティスのコンセプトは有効であると考えられます。

ピラティスに興味のもたれた方は以下の記事を参考にしてみてください。

 

 

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①そもそも「ピラティスとは?」を知りたい方はこちら

ピラティス(Pilates)とは? どんな効果があるの? -基本原則と予防医学の関係から-

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