胸椎の回旋・伸展の可動域の重要性 〜腰痛との関係を骨模型を使用して〜

胸椎の可動性はピラティスにおいて重要視されています。

呼吸器だけではなく運動器の面からも胸椎の動きを引き出すことは大切で、
胸椎の動きが悪いことで腰痛や頸部痛を引き起こす可能性があります。

脊柱管狭窄症で腰椎と頚椎は多いのに胸椎は少ないですよね。

これらはほとんどが結果として起こります。
胸椎の問題がその上下の腰部や頸部に影響しているわけです。

非特異的腰痛の原因の一つとして、理学療法士の蒲田和芳先生は胸郭のアライメント不良にあるとしています。

非対称性の胸郭のアライメントは胸椎伸展可動性低下を引き起こし、結果的に腰椎にストレスを与えてしまうためです。

腰痛に対して腰椎だけにアプローチをしていては効果は不十分です。

そこで、胸椎の動きが大切になってくるわけですが特に重要と考えられるのが胸椎の伸展と回旋です。

今回は胸椎の伸展と回旋を中心に骨模型を使用して画像を自作してみたのでその画像を使用して説明をしてみます。

 

 

脊柱の生理的なS字カーブと胸椎

胸椎・胸郭 もけい2.002

脊柱は本来生理的な弯曲といって、S字カーブを描いています。

その中で胸椎は後弯しています。

しかし、胸椎は後弯しすぎで困ってしまう場合が多いです。

それは現代の日常生活において胸椎を後弯する姿勢が多いためです。

どんどん胸椎が後弯位で固定してしまい、伸展可動域が低下してしまっている人が多いです。
いわゆる猫背や高齢者の円背姿勢です。

胸椎・胸郭 もけい2.003

 

 

脊柱の回旋

脊柱の回旋動作についてです。

脊柱の回旋といっても、頚椎・胸椎・腰椎があり各関節がバランスよく回旋することが必要です。

頚椎は回旋しやすいのはイメージつきやすいと思いますが、胸椎と腰椎はどうでしょうか?

勘違いしやすいのが、「腰を回しましょう!」なんていって腰をスポーツの時に捻る動作です。

そもそも腰椎はあまり回旋できない構造です。

その腰椎を無理に回旋しようとすれば結果として腰椎に過度のストレスを与えてしまいます。

胸椎・胸郭 もけい2.004

下記の可動域を参考にしてください。

【各椎体の回旋角度】
・頚椎7個の合計回旋角度:45~50°
・胸椎12個の合計回旋角度:35°
・腰椎5個の合計回旋角度:5°
※参考:「カパンディ関節の生理学」

 

 

胸椎回旋と腰痛の関係

実際に骨模型を使用して、脊柱の回旋をしてみました。

注目すべきは胸椎12番目から腰椎にかけての回旋です。

頚椎と胸椎は上記の参考可動域の通り回旋しやすい感触です。

しかし。
胸椎12番目から急に回旋がしにくくなり腰椎はほとんど回旋できません。

胸椎・胸郭 もけい2.005

椎間関節がすぐにぶつかってしまい、回旋できる要素は見当たりません。

これを無理やり回旋しようとすれば腰椎は壊れてしまうのではないかというくらい回旋できませんでした。

これらから、脊柱の回旋動作は腰椎ではなく胸椎で回旋することが大切であるということがわかると思います。

※可動域に関する詳細は下記記事をご参照ください。
☞関連記事:脊柱の可動域まとめ(胸椎・腰痛の関係性を中心に)

 

 

胸椎伸展と腰痛の関係

脊柱を伸展してみましょう。

立位で後屈をしてゆくと、腰がすぐに痛くなってしまう人がいます。

腰椎の椎間関節に対する伸展ストレスがかかりすぎてしまっているからです。

上述したように健常者でもほとんどの人は胸椎の伸展可動域が低下しています。

伸展動作の際に胸椎の伸展が十分に行えれば、腰椎に過剰なストレスがかかりにくくなります。

胸椎・胸郭 もけい2.006

胸椎の伸展可動域を改善させるには下部胸郭の拡張の改善が必要になります。

胸椎は椎間関節以外に肋骨との関節があるため肋骨の動きにも影響を受けるためです。この点については下記の記事をご参照ください。
☞参考記事:胸椎・胸郭の基本的な解剖・特徴まとめ

 

 

まとめ

胸椎の回旋と伸展の重要性について、骨模型を使用しながら腰痛との関係性について説明をしました。

胸椎は多くの人が、日常生活において動かすことを意識しにくい部位です。

しかし、胸椎の動きが低下していることで様々な問題が引き起こされる可能性があります。

腰痛を例に考えてみると、胸椎の回旋と伸展の可動性が低下することで結果として腰部にストレスを与えてしまいます。

正しく脊柱の動きを理解して、胸椎の回旋と伸展の可動性を高めてゆくようなアプローチをしてゆくことが大切です。

ピラティスエクササイズはこれらの動きが体系化されており、腰痛に対しても非常に有効であると考えられいます。

 

 

【補足】「ピラティスって何?」と気になった方へ

ピラティスというのはリハビリテーションが起源のシンプルなエクササイズです。

ヨガと少し似ているけど違います。

ピラティスの特徴は脊柱を正しく動すことを学習し、可動域を広げてしなやかな身体を目指すことができる点です。

硬くなりやすい胸椎の動きを出してゆくことで、脊柱がバランスよく動くようになるので腰痛などの予防にも非常に有効です。

ピラティスについて詳しく知りたい方はこちらの記事を参照ください。

【関連記事】ピラティス(Pilates)とは?

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