目次
【動画】腹式呼吸の基本
まずはこちらの動画を参考にしてください。
腹式呼吸と胸式呼吸
腹式呼吸と胸式呼吸の違いについてまずは理解しておきましょう。
人の呼吸様式はこの2つに大別されます。
これらは字のごとく、腹式呼吸は「お腹の部分を主に使った呼吸」で胸式呼吸は「胸の部分を主に使った呼吸方法」となります。
呼吸動作というものは体に酸素を取り込むというのが目的です。
人が活動するためのエネルギーを作りだすのには酸素が不可欠だからです。
では、目的が同じ呼吸動作なのに、なぜお腹と胸といった違いがでるのでしょうか?
それは、使う筋肉が異なるためです。
・腹式呼吸:主に横隔膜
・胸式呼吸:横隔膜以外に肩・首まわりの筋肉(外肋間筋・斜角筋・胸鎖乳突筋など)
通常の人の自然な呼吸は横隔膜以外にはそれほど筋肉の活動を必要としません。
つまり、自然な呼吸は腹式呼吸が主です。
一方で、頑張って走ったりしたときに息が切れて、「肩で呼吸する」ような状態になることがありますがこのときは胸や肩を大きく動かす胸式呼吸の方法となります。
通常は腹式呼吸ですが、身体に酸素が足りなくてもっと頑張って呼吸をしなければならないといった状況のときに胸式呼吸が動員されるというイメージです。
しかしながら、若い人でもその本来の呼吸様式がうまく行えずに通常のときから胸式呼吸が優位になってしまっている人も多くいます。
まずは腹式呼吸ができるようになることが大切なことです。
*胸式呼吸に関してはこちらの記事で詳しく説明をしています
腹式呼吸の基本的な方法とポイント
上記の動画を見ていただくとわかると思いますが、腹式呼吸の方法をまとめてみます。
腹式呼吸の方法
①軽く息を吐く
②鼻から息を吸う
③お腹を膨らませる
④口から息をゆっくり長く息を吐く
⑤お腹が平らになる
腹式呼吸の特徴としては、息を吸ったときにお腹が膨らむということです。
頑張って腹式呼吸をしようとすると結局努力性の呼吸様式でリラックスができないというパターンに陥ってしまうことがあります。
無理にお腹を膨らませようとせずに、少しずつ行ってみてください。
腹式呼吸の効果を高める工夫
お腹を膨らませるということ自体が、最初は難しいかもしれません。
お腹への意識を高めるためにお腹の上に自分の手を置いて動きを確認してみましょう。
軽い重りなどをお腹に置いてみても良いです。
お腹が重りによって軽く圧迫されることで、意識を高めやすくすることができます。
さらに、慣れてきたら重りの重さを増やしてゆくと横隔膜のトレーニングとしても有効な方法となります。
なぜ腹式呼吸ではお腹を膨らませるの?
肺を膨らませるのが目的の呼吸なのに、お腹を膨らませるように呼吸をするのって少し不思議ですよね。
なぜでしょうか?
腹式呼吸は横隔膜を主に使用する呼吸方法です。
横隔膜は呼吸において最重要な筋肉です。
呼吸(息を吸おう)をしようとした際に、横隔膜が先行的に収縮することで胸郭の容積を増大させて結果的に肺を膨らませることができます。
横隔膜が収縮すると、横隔膜は下方向(足側)に下がってきます。
横隔膜の下には内臓がありますので、横隔膜が下がってくることで内臓が下の押されることになります。
内臓の下には骨盤(骨)がありますので、それ以上は下がることができないので、結果として内臓がお腹の前側に膨らんだようにポコっと出てきます。
この現象が腹式呼吸によって「お腹を膨らませる」という状態です。
お腹がしっかりと膨らんでいる状態は、横隔膜がしっかりと収縮して下がっている状態。
つまり、肺に多くの空気が取り込まれて広がっている状態なのです。
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なぜ鼻から息を吸うの?
腹式呼吸では鼻から息を吸うことが推奨されることが多いです。
息を吸おうとしたら口からでも可能ですよね。
しかも、口から吸ったほうが鼻よりも入り口が大きくて一度にたくさん吸えそうな気もします。
なぜ鼻から吸うのでしょうか?
鼻は呼吸器・口は消化器
人間の進化の過程から考えてみると、そもそも鼻と口は役割が違うのです。
・鼻は肺と結びついた器官:呼吸器の入り口
・口は胃や腸と結びついた器官:消化器の入り口
鼻と口のどちらでも人間は可能ですが、本来は口は食事をしたり発声をするための器官であるため、
通常の呼吸においては鼻で呼吸をするべきであるという考え方です。
鼻から吸うと横隔膜が働きやすい
口から吸ったときと鼻から吸ったときの、お腹の膨らませやすさを感じてみましょう。
鼻から吸ったときのほうが口からよりもお腹が膨らませやすいのではないでしょうか?
口からの呼吸だとお腹ではなく胸や肩が先行的に動きやすく胸式呼吸が優位になってしまいます。
鼻から吸ったときのほうが横隔膜を働かせやすいのです。
鼻には加湿・浄化機能がある
冬場に空気が乾燥をすると、加湿器を使用したりしますよね。
口や鼻の粘膜の乾燥は本来の人の免疫能力を低下させてしまうので、加湿をすることがインフルエンザなどの予防につながるのです。
鼻にはその加湿・加温する機能と余計なものが体内の入ってくるのを防ぐ浄化作用があります。
鼻毛や鼻水がこの機能を果たしており、口ではなく鼻を介して取り込むことで酸素をよい状態で肺に送り込むことができるのです。
口にはその機能がなく、口呼吸をつづけていると空気が加湿・浄化されずのそのまま体内に入ってしまうため病気の原因になるとされています。
ゆっくり深く呼吸するのはなぜか?
腹式呼吸の際には深くゆっくりと行うことが大切です。
浅くて早い呼吸は良くありません。
その理由は呼吸の効率性にあります。
呼吸の本来の目的は、肺に酸素を送りこんで体内へ酸素を供給することです。
体内の酸素化は肺胞で行われています。
つまり、肺自体(肺胞)にいかにたくさんの空気を効率よく届けるか?ということがポイントとなります。
鼻から吸った空気は、肺に届くまで一定の距離があります。
鼻腔を通り、気道を通過して肺に達します。
その間はただの通り道ですので、酸素をエネルギーには変えられません。
この部分を「解剖学的死腔」と呼びます。
この部位を通る回数が多くなってしまうと、無駄が多くなってしまいます。
同じ容量の空気を吸い込んでもゴールである肺でエネルギーに変えられる酸素量は少なくなってしまうのです。
つまり、浅くて早い呼吸は無駄が多く効率の悪い呼吸方法であるため深くゆっくりとした呼吸が必要とされるのです。
長くゆっくり「吐く」理由と効果
深い呼吸をすることが大切です。
さらに、吐くときに意識をしたいのがゆっくりと長く息を吐くことです。
自律神経との関係に着目をします。
自立神経は交感神経と副交感神経に分かれており、この二つの働きがバランスをとりながら内臓の働きを司っています。
・交感神経:興奮状態で優位に働く神経
・副交感神経:リラックスした状態で働く神経
多くの人が普段の生活の中で、リラックスがうまくできずの交感神経優位になってしまっています。
腹式呼吸はリラックス効果があるということを聞いたことがあるかもしれません。
その理由は腹式呼吸でゆっくりと長く吐くことで副交感神経の働きを刺激するためです。
呼吸中枢(脳の延髄)が副交感神経につながる迷走神経と同じ部位にあることがその理由です。
息を意識的に長くゆっくりと吐くことで自分で副交感神経の働きを活発にすることができ、リラックスにつながってくるのです。
ある研究結果によると20秒間ほど息を長く吐くと、副交感神経の働きが非常に高くなったというデータもありますので、目安にしてみるとよいでしょう。
腹式呼吸は素晴らしい自主トレーニングである
腹式呼吸は適切に行うと非常に有効な自主トレーニング・セルフエクササイズとなります。
体幹筋のトレーニングやリハビリテーションなどにも幅広く応用ができます。
紹介した動画や画像では仰向け姿勢で行っていますが、座位姿勢や立位姿勢でも行えるようになるとよいです。
呼吸運動は人が1日に何度も何度も繰り返す動作です。
腹式呼吸ができずに口から息を吸って胸式呼吸ばかり繰り返しているとどうなるでしょうか?
・呼吸の効率が悪く疲れやすい。
・横隔膜の機能が低下して、体幹が弱くなる。姿勢が悪くなる。
・加湿・浄化のされない空気を取り込むため病気になりやすい。
・交感神経優位でリラックスができない。
これらは胸式呼吸を繰り返すことの悪循環です。
腹式呼吸を意識的に行うことが良好な循環をつくり出すきっかけになるはずです。
とても詳しい説明で納得できました有難う御座いました、呼吸方は今まで試みておりましたが今回深い所まで理解出来て良かったです
匿名さま
コメントありがとうございます。
少しでも参考になれば嬉しいです!