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慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは?
人間の体にとって有害な粒子やガスを吸い込んでしまうことで、肺や気管支が炎症を起こし、それがもとになって進行性の気流制限(呼吸が上手くできなくなること)が現れる病気を、「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」と言います。
以前は、慢性閉塞性肺疾患を引き起こす原因疾患として「肺気腫」と「慢性気管支炎」に厳密に分類されていました。
しかし現在では、両者とも喫煙が原因である場合がほとんどで、また両疾患が合併することが多いことから、この二つの疾患による閉塞性肺疾患を合わせて慢性閉塞性肺疾患(COPD)と呼ぶようになりました。
※一般的に、肺気腫は病理学的用語で、慢性気管支炎は症状・診断として使われることもあります。
COPDの主な症状は?
一番辛いのは「動くと苦しい」ということ
COPDの主な症状は慢性的な咳嗽・喀痰・労作時(動いたとき)の呼吸困難です。
特に労作時の呼吸困難は最も多い主訴です。
動くと苦しくなってしまうので、どうしてもそれを避けるために動くこと自体が辛くなってしまい、日常生活での活動範囲が制限されてしまいがちです。
さらに、活動量が減ってしまうことでさらに体力が低下しより一層、活動範囲が狭くなってしまうという悪循環に陥りやすくなる傾向にあります。
COPDの合併症
COPDは肺の病気ですが、肺ばかりではなく虚血性心疾患や骨粗鬆症、糖尿病など全身にさまざまな病気を引き起こします。
さらに、COPDの人は肺がんになる可能性が高いとされています。
同じたばこの量を吸っていても、COPDの人はそうでない人に比べて約10倍肺がんになりやすいと言われています。
COPDの人は息を吐くのが苦手
COPDの主な主訴は「動くと呼吸が苦しくなってしまう」ということでした。
その理由の一つが、息を吐くことが苦手であるということです。
COPDの病態として気道が狭くなってしまい息が十分に吐き出すことができないという特徴があります。
①拘束性換気障害:息を吸うのが苦手
②閉塞性換気障害:息を吐くのが苦手
なぜ呼吸が苦しくなってしまうの?
①二酸化炭素が体内に溜まってしまう
息が吐けないとなぜ苦しくなってしまうのでしょうか?
人の脳が呼吸が苦しいと認識するのは、二酸化炭素が血液中に溜まってしまうことが影響しています。
中枢性化学受容器といって脳の延髄という部位にあるセンサーが二酸化炭素の上昇に対して反応をしています。
息を吐く目的は二酸化炭素を体外に出すということですが、息が十分に吐けないという状態では二酸化炭素が体内に溜まってしまいます。
その結果、「呼吸が苦しい」という感覚が起こるのです。
②体内の酸素不足
また、息が吐けないということは息が吸えないということの裏返しでもあります。
つまり、息が吸えずに新しい酸素が体内に取り入れらないという状態。
動くときには酸素が必要なのに、うまく酸素を取り入れらなければ身体は酸素不足になってしまいますので苦しくなってしまうのは容易にイメージがつくと思います。
*体内の酸素不足を認識するのは中枢性化学受容器ではなく末梢性化学受容器です。
口すぼめ呼吸の方法と効果
COPDのような閉塞性換気障害の方(息を吐くのが苦手な病態)には口すぼめ呼吸が有効であると言われています。
口すぼめ呼吸は呼吸器疾患のセルフマネジメント・自主トレーニングの一つとしてとても重要なので、是非とも出来るようにしておきましょう。
口すぼめ呼吸とは?
口すぼめ呼吸は「息を吐くこと」を主に意識した呼吸方法です。
【方法】
①軽く口を閉じて鼻から息を吸う
②口をすぼめてゆっくりと時間をかけて息をはく
【ポイント】
・息を吐くときは、ロウソクの火を揺らすようなイメージで
*ロウソクの火を吹き消すほどの強さは強すぎで逆効果
・吐く時間が吸う時間の2倍以上になるように
口すぼめ呼吸は呼吸困難感を軽減させる
COPDの方は気道(空気の通り道)が狭くなってしまっています。
これに対して、口をすぼめて(空気の出口を狭くして)ゆっくりと吐くことで気道が広がりやすくなります。
その結果、通常よりも息が吐きやすくなり二酸化炭素を体外に出しやすくなるのです。
このときに頑張って息を吐こうとしてはいけません。
「頑張らずにリラックスしてゆったりと息をはく」
ここがとても重要なポイントです。
これが上手に行えると「動くと苦しくなってしまう」という呼吸困難感を軽減させることにつながります。
一回の呼吸が大きくなり効率的になる
口すぼめ息がしっかりと吐ければ、そのあとに大きく息を吸うことができます。
浅くて速い呼吸はとても非効率なのです。
どうしても息が苦しくなると速い呼吸をしてしまいがちですが、勢いよく速い呼吸をしてしまうと気道のをうまく広げられなくなり結果的に息が吐けなくなります。
結果的に息が十分に吸えなくなります。
また、吸った空気は最終的には気道を通って肺胞に届けることで酸素が血液中に取り込まれるわけですが、肺胞までの通り道には一定の距離があります。
この距離にあたる部分を「解剖学的死腔」といいます。
この解剖学的死腔を通る回数が増えれば増えるほど、効率の悪い呼吸となってしまいます。
そのため、ゆっくりと深い呼吸をすることが呼吸の効率を高めるために必要なポイントなのです。
動作をするときにも口すぼめ呼吸を意識しよう
動くときに吐く
口すぼめ呼吸は、まずは安静にした座位が臥位姿勢から練習するとよいです。
慣れてきたら動くときにも意識しながら行うと効果的です。
COPDの方は少し動くだけで、呼吸が苦しくなってしまいます。
そのときに、苦しいからといって一生懸命に速い呼吸をしてしまっては結果的に効率の悪い呼吸方法に陥ってしまいます。
焦らずに口すぼめ呼吸を取り入れながら動作をしてみましょう。
基本的には「息を吐きながら動く」を意識することです。
動作をする際の呼吸方法の例
【立ち上がり】
①椅子に座った状態で息を吸う
②息を吐きながら立ち上がる
③座るときも息を吐きながら行う
【階段】
①階段の前で深呼吸
②息を吐きながら階段を登る
③途中で止まって息を吸う
④もう一度息を吐きながら登る
【参考】呼吸訓練で大切な腹式呼吸についてはこちらで詳しく説明しています。
*注意*
呼吸器疾患の方のリハビリテーションとして横隔膜の働きを促す腹式呼吸を練習することは有効な方法です。
しかし、COPDの方などで一部の方では無理に腹式呼吸の練習をすると逆に苦しくなってしまう場合がありますので全ての人に適応というわけではありません。
まとめ
・慢性閉塞性肺疾患(COPD)は息を吐くのが苦手な病態
・COPDの人が息が苦しくなってしまうのは、二酸化炭素が体内に溜まってしまうから
・「口すぼめ呼吸」をすると息を効率良く吐くことができる
・動作時も口すぼめ呼吸を取り入れるようにする